
◆IT人材は足りてるの?足りてないの?
「IT人材は不足しています」
「未経験でもエンジニアになれる!」
SNSや広告でこんな言葉を見かけることが増えました。
一方で、転職サイトをのぞくと「経験者歓迎」「実務3年以上」ばかり。
──あれ? どっちが本当?
「人手不足なのに採用されない」この矛盾は、多くの人が感じていると思います。
実はこの背景には、量と質のギャップがあるんです。
日本ではIT人材の数こそ年々増えていますが、層(=スキルの厚み)が育っていない。
経済産業省の報告書でも、「2030年に最大79万人のIT人材不足」という数字が出ています。
でもそれは「人がいない」のではなく、「できることの幅を持った人が足りない」という意味なんです。
◆数は増えているのに「層」が薄い、その理由
1. 教育と現場の断絶
ITスクールやオンライン学習サービスが増え、勉強の場は格段に広がりました。
しかし多くのカリキュラムは「Webサイト制作」「簡単なアプリ開発」など、学びやすい部分に集中しています。
一方、現場ではクラウド、API連携、セキュリティ、チーム開発など、実務で必要なスキルが求められています。
つまり、「教室」と「現場」にギャップがある。
学ぶ人は増えても、戦力化まで届かない。これが「層が薄い」最大の原因のひとつです。
2. 経験の深さが積みにくい構造
日本企業の多くは新人教育よりも即戦力採用を重視しています。
教育コストをかけにくい構造があり、「できる人」に仕事が偏りやすい。
その結果、若手や未経験者が浅い経験のまま転職を繰り返すケースも増えています。
一見「人は動いている」のに、業界全体のスキル底上げにはつながっていません。
3. マネジメント層のIT理解不足
DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉は広まりましたが、
「何をどう変えるのか」が明確でないまま、IT導入だけが進むケースも多いです。
経済産業省も指摘しているように、「ITを理解する経営層が少ない」ことが課題。
つまり、現場の努力と上の方針の間にズレが生まれ、結果的に人材が育たない構造になっています。
◆「層」を厚くするために、今からできること
「じゃあ、これから目指す人はどうすればいいの?」
ここが一番大事なポイントです。
1. ツールを覚えるより、仕組みを理解する
たとえば「Pythonを学ぶ」だけではなく、「なぜその処理を自動化するのか」「業務をどう変えるのか」といった背景まで考えられる人は強いです。
「コードを書く人」から、「課題を解決できる人」へ。これが求められる変化です。
2. 広さより、深さを意識する
「HTMLもJavaScriptも少しだけできる」より、「JavaScriptで何かを作り込んだ経験がある」ほうが、現場では評価されます。
最初は狭くてOK。深く掘る経験が、のちに他の技術を理解する土台になります。
3. 「教わる姿勢」ではなく「吸収する姿勢」を持つ
現場は学校ではありません。
でも、わからないから成長できないではなく、「わからないからこそ、動いて掴む」。
この意識を持てる人は、どの会社でも重宝されます。
◆IT業界は「量」ではなく「質」の時代へ
今後のIT業界は、人が足りないではなく、力を発揮できる人が足りない時代になります。
その中で必要なのは、「どのスキルを学ぶか」よりも「どんな視点で学ぶか」。
もしあなたがこれからITの世界に踏み出すなら、
数合わせの一人ではなく、厚みをつくる一人を目指してみてください。
それが、業界の「層」を変える最初の一歩になります。